2012年4月29日日曜日

『LUPIN the Third -峰不二子という女-』第4話「歌に生き、恋に生き」

ルパンの当番回。オペラ座の怪人に仮面の歌姫、地下水路……と、魅力的な道具立てが並んでいるにも関わらず、どうにも作劇がうまく回っている感じがしない(そういう意味では、第3話もそうだったのだけれど)。

「舞台」を題材に取ったとき、その舞台の「上」と「裏」の落差が、ドラマの原動力になるのが王道なのだけれど(例えば『コードギアス』のように)、本エピソードは敢然とそうした「王道」に背を向けて、しかし、結局どこに着地しようとするのか、よくわからない。舞台の「裏」にこそ人生がある。……というにしては、歌姫のくだした「決断」には、人間の生が抱える業に欠けている印象がある。恋に生きる者の「狂気」もなければ、歌に生きる者が抱える「呪い」もない。ゆえに、そこで起こるドラマもまた、薄っぺらなものに見えてしまう。
脚本/岡田麿里、絵コンテ/高橋敦史、演出/山内東生雄、作画監督/清水洋。

『氷菓』第1話「伝統ある古典部の再生」

京都アニメーションらしい、丁寧な作画が印象に残る。が、その「丁寧さ」が何を志向しているのか、(今のところ)よくわからないところもまた、このスタジオらしい。京都アニメーションの制作作品は、回を重ねていくとずいぶん印象が変わっていくので、この段階で判断するのは、危険だなと(やっぱり)思う。

「日常にあるささいな齟齬」を、ミニマリスティックに広げていく……というのが、基本線なのだと思うのだけれど、ややもするとうざったくなってしまうはずの、主人公・折木奉太郎の独白を、うまく、不快にならないぎりぎりのラインで拾ってみせる中村悠一、そしてお調子者のように見えて、じつは意外と目端の効く友人・福部里志役の阪口大助。ふたりのやり取りは、さすがの安定感か。
脚本/賀東招二、絵コンテ・演出/武本康弘、作画監督/西屋太志。

『LUPIN the Third -峰不二子という女-』第1話「大泥棒VS女怪盗」

絵と音響(劇伴のつけ方も含めて) については、文句なしの仕上がりだと思う。

ただ、とにかく物語の組み立てに不満が募る。題材が題材なだけに(なにせ「ルパン」なわけで)、「緻密な作劇をしろ」とは思わないがしかし、前半の、牢に閉じ込められたルパンと不二子の、極めて説明的な会話の応酬(しかも長すぎて、内容が頭に入ってこない)とか、「島」の仕掛けを説明するだけしてまったく機能させない後半の展開とか、正直「どうよ?」と思う。 
あと、このエピソードの主軸である「麻薬」をめぐる顛末も、決して上手くいってるようには見えないのが、なにより致命傷。

まあ、リメイクものって外野も内野もうるさい人が多いだろうなーと予想するので、あんまりブーブー言うのもなにかなーと思うのだけれど。
脚本/岡田麿里、絵コンテ/山本沙代、演出/高橋亨、作画監督/小池健。


 

『夏色キセキ』第4話「ユカまっしぐら」

冒頭近くにある優香と凛子の会話が抜群によくて、思わず背筋が震えた。

凛子「先輩のこと、好きだったの」
優香「過去形にすんな! ……はあ、年下はないって言ってたのに」
凛子「紗希、大人っぽいから」
優香「どうせガキですよー」
凛子「髪、巻く?」
優香「1日持たないぃ」
凛子「……だよね」

この、短いセンテンスがピンポンのように交わされて、しかも話のポンポンと飛躍する感覚。綾奈ゆにこっぽいなあ……と思ってたら、ホントに脚本が綾奈ゆにこだった。
第3話(村井さだゆき)もそうだったけど、脚本家の個性がうまく活きてるな、と思う。

「登場人物の人格が入れ替わってしまう」という仕掛け自体は、けっして上手くいってるとは思えなかった(特に、途中から4人とも中身が入れ替わってしまって以降は、誰が誰だか一瞬、わからなくなる場面も多かった)けど、最後の、名前を呼んでもらうシーンで、優香の欲望が挫かれてしまう流れはすばらしい。
脚本/綾奈ゆにこ、絵コンテ・演出/京極尚彦、作画監督/山村直己。

『戦国コレクション』第4話「One-eyed Dragon」

夏葉くんが書いてるように( https://t.co/heawGqGr )全体に抽象度が高すぎるきらいががが。

『戦コレ』は物語の基本前提として、架空の戦国時代と現実世界の「落差」がある。
で、それを支えている(担保している)のは、現実世界の「風景」なんだけど、4話はそうしたディテールを排除した画面構成になっているので、全体に「空想=絵」の世界に包まれてしまっている。つまり、結果として現実世界との接点が極めて薄い。

しかも、そこに『さそり』(直接参照されているのは、伊藤俊也監督の『女囚701号/さそり』(72年)だろう)という別のレイヤーの、フィクションを被せているので、より現実世界との乖離感が強い。加えて、政宗自身が「現実との接点が薄いキャラクター」として描かれていることが、それを加速させているように見える。

また加えて、政宗のクローズアップを多用していることで、全体が「政宗の心象風景」のようにも見える。そういう意味でも、これまでの3話とはまったく違った趣向が施されているのだが、それが『戦国コレクション』の物語世界とうまく調和しているかというと、どうも違和感が残る。
脚本/新井輝、絵コンテ・演出/後藤圭二、作画監督/石川智美。

『戦国コレクション』第3話「Pure Angel」

川によってひき離された謙信と兼継、という構図の、バカバカしいまでの大胆不敵さ! 高円寺近辺にあんな大きな川なんてあったっけと思ったけど、この構図を成立させるためだったのかー。

今にも兼継がざぶざぶと川に入っていきそうな気配を感じてドキドキしていたのだが、2人の気持ちが通じた瞬間、兼継はふわりと羽を広げ、悠々と川を飛んで渡る。そして、虹の橋がかかると同時に色を取り戻すモノクロームの風景。この徹底的にあっけらかんとした単純さ。

こういう瞬間を目の当たりにすると、心の底から「映画やアニメが好きでよかった」と思う。
脚本/雑破業、絵コンテ/後藤圭二、演出/藤本次郎、作画監督/奥野浩行・大庭小枝。